【今日の一言】
本の向こう側から、風が吹いてきます
「くちびるに歌を」の舞台は五島列島。そこの中学生が、Nコン、つまりNHK全国音楽コンクールを目指すお話。
生徒も、保護者も、教師も、Nコンを目指す中で、いろいろなことを体験していく。
とても素敵な物語。大人になった今こそ、色々と感じることができるのかなあ、中学の時に読んでも、私はよくわかんなかっただろうな、とも思いました。
その島の生活を、心で切り取りながら、ある種淡々と進んでいく物語。でも、しっかり、ハッとさせられる伏線も仕込んであるのですよ。読み終わった後は、爽やかな風が、吹いていることを感じることができるでしょう。
「くちびるに歌を」に登場する中学生の合唱部が目指すNコンの課題曲が、アンジェラ・アキの「手紙」
これは実際に、数年前の中学生の課題曲でした。
15歳の自分が、未来の自分に、今の悩んでいることを打ち明け、未来の自分が、15の自分に、伝えたいことを伝える、という曲。
ベタだし、未来の自分が、15の自分にアドバイスできることなんて、殆ど無いことは、年をを取るとわかるんだけど。
でも、本書の登場人物たちの気持ちは、それぞれよくわかる。その悩みもわかる。でもそう思っちゃうよね……。と、本書を読んでいると、大人の今だからわかることもあり、まさに、アンジェラ・アキの「手紙~拝啓 十五の君へ」。
私も、15歳の頃は、登場人物と全く同じことではないけど、同じようには悩んでいた。声をかけてあげたいけど、アドバイスしたところでどうしようもない。
本人たちが自ら、成長していくしかないのです。
ドキドキハラハラしながら、でも、読者である私は、彼ら彼女らの成長を、しっかり読み届けることもできるのです。
計算されたプロットも魅力
子どもたちが、Nコンを目指すプロセスを舞台に、成長していく物語。それもとても素敵です。
でも、作者の中田永一さんは、本書に面白い仕掛けを施しているのです。ここはさすがです。
まるでミステリー小説の謎解きのように、「え、そういうことなんだ」とハッとさせられてしまいます。それがまた、結末の感動につながっていくのだから素晴らしい……。
いや、ちょっと書きすぎました。
あとはみなさん、読んでください。
本から、歌が聴こえてきます。そして風も吹いてきますよ。
;くちびるに歌を (小学館文庫)
新垣結衣の主演で映画化も
そうなんです。ガッキー主演で映画化もされています。
演出は三木孝浩。
アイドル映画か……と思って観ると、いや、これはしっかりできている映画です。
ガッキーファンはもちろんですが、「くちびるに歌を」ファンにも観て欲しい映画になっています。
新垣結衣にふさわしい役だと思います。
;くちびるに歌を Blu-ray 通常版