エッセイ

初恋を忘れ、天使が通っていく。まあ、色々と忘れてしまうということだ

「まだあげ初めし前髪の……」……初恋。若菜集の比較的最初の方に収録された美しい詩だ。
この「初恋」という詩の作者は誰か、という問題がテストかなんかで出た。
普段ならすぐ「島崎藤村」と答えるのだけど、この時はどういうわけか「ふじむらとうそん」と頭に浮かんでしまった。
あれ?どんな漢字だっけな?ちょっとおかしいな。「藤村藤村」となってしまう。
頭の中がそうなってしまうと、島崎藤村という名前が出て来ない。
結局思い出したかどうか忘れたが、なんか不思議な体験だった。

島崎藤村という名前はペンネームだ。本名は島崎春樹。これなら一瞬忘れてしまうこともなかっただろう。

そのこととはちょっと違うかもしれないけど、名前が出てこないとか、何か思い出せないといったようなことは、もう僕ぐらいの年になると頻繁に起こってくる。「いや、顔は浮かんでるんだけど、名前が思い出せないよ」。
脳のメカニズム上、ビジュアルは忘れがたく、文字は思い出しづらいのでしょうね。

このような現象は、心理学で「TOT現象」(Tip of the Tongue phenomenon)、日本語では「舌先現象」と呼ばれているとのこと。フランス語由来では「プレスクヴュ」(presque vu=ほとんど見えている)。

ちなみに本屋さんに行くと大きい方のトイレに行きたくなる人が結構いるらしく、これを「青木まりこ現象」と呼ぶ。なんのことを言っているのか全くわからない人もいるかもしれないが、この現象については近いうちに記事を上げますね。

話を戻して。
皆さんは次のような経験がないですか?複数人でしゃべっていて、みんな突然同じことを忘れてしまう。あのときのドラマのタイトルってなんだっけ?有名なドラマだからいつもは覚えているのに、その時忘れてしまう。するとそこにいるみんなも名前が出ない。つまり忘れている。こういうことってよくあるのだろうかと思って調べてみたら、どうやら、やっぱりあるらしい。
しかも学術的な研究もされているとのこと。
カナダのローレンシャン大学のリュック・ルソー教授の研究によると、舌先現象はグループ内で発生しやすく、他人に伝染する可能性があるとされている。
実験では、4人グループで常識問題に答えた場合、舌先現象は1人あたり平均6回だったのに対し、1人で答えた場合は平均2回だけだった。 集団でいる方が3倍も「出てこない」状態になりやすいわけだ。

ルソー教授は、1人が「ほら、あれ、なんだっけ?」と推量を始めると、その状態が他のメンバーも、心が同調して伝染するのではないかと論じている。
それにしても面白い研究があるものだ。

またちょっと話が変わるけど、みんなでワイワイ話していて、パタッと話が止まることがある。数秒間程度の沈黙と静寂。
このような本当に短い時間を「天使が通る」と称するのはまあ、結構有名な話ですね。フランス語で「Un ange passe」(天使が通る)。

なぜ、天使が通る、というのか?
それは諸説あるのでしょうが、有名なのは
天使が通りかかった時に自分たちの言葉が神に告げ口されるのを恐れて黙る、という理由。

大体みんなで話している内容って、くだらないことやスキャンダルや悪口だったりしますからね。

僕は多分、天使様に聞かれても問題ないことを喋っていると思うので、いつでも僕の側をお通りください。
そしてできればご挨拶をさせていただきたいので、お声をかけていただけるとありがたいのですが。


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