エッセイ

骨伝導 君の口から出た言葉 グッときたけど理由はわからん

大学時代の同僚とのグループラインがある。
本当に便利になったものだ。もう何十年も会っていなかった。それでも、あの頃はとても親しかった友人たちと簡単に繋がることができる。

そんな中で、ここのとこをよくLINEでやりとりするのは女友達のTちゃん。
学生時代も中野区野方にお互い住んでいて、本当に男女関係なく、それでも仲良くやっていた。
Tちゃんの実家は九州で造り酒屋をやっていた。野方にはお兄さんと一緒に住んでいた。
まあそこに関しては「ああ。お兄さんと住んでるんだなぁ」ぐらいにしか思ってなかったけど、Tちゃんとお兄さんが住んでいた小ぎれいなアパートにはお風呂があり、それが、いいなぁとは思ってた。
当時、一月24,000円だっただろうか。六畳一間僕の下宿というかアパートには、小さな台所はあったけど、トイレは共同だった。もちろんお風呂なんかあるはずがない。

僕のアパートからは歩いて5分から10分のところに銭湯があって、そこに通っていた。
通ってきたとは言いながら、当時、僕は犬が怖くて、さあ、お風呂に行こうかなと思って、洗面器に石鹸などを入れて準備をしていると、どこかで犬の鳴き声がすることがあった。そうなるともう銭湯に行くのをやめていた。
お風呂に入らない習慣は、どうもあの頃ついたらしい。

銭湯はTちゃんの家の方にあり、たまに行く銭湯の湯船の中で、ああ、気持ちいいなあと思いながら、Tちゃんは自分ちのお風呂で裸になってるんだろうなあと悪の妄想をかきたてていたなんてことは全くなかった。
Tちゃんはその頃も可愛かったが、全く男女の情愛のようなものはお互いになかったんじゃないかなと思う。いや、Tちゃんは僕の方に何かあったかもしれないけど、それはもうわからないな。

それでもTちゃんとのご縁は不思議に続いて、大学卒業間際にTちゃんと僕と、それからもう一人、もう一組の男女カップル、合計4人で、おそらくあれは映画ロッキーを観に行った。いや、違うなぁ。ロッキーの東京ロードショーが77年だからちょっとタイミングが合わないか。まあいいや。
4人で映画を観に行ったことは確かだ。

ところが、Tちゃんは、このことを全く覚えていない。まあ、つまりお互いに普通のガールフレンドとボーイフレンドだったんだな。

卒業して彼女は繊維メーカーに就職して、どういうわけか、僕がその繊維メーカーに訪ねて行ったことがある。僕は家庭用品メーカーに勤めていたんだけど、多分その仕事関係で行ったんじゃないかな。洗剤とかそういったもののコピーを書いてたから。

まあとにかく連絡が疎遠になったり、比較的頻繁に行ったりするようなことはあったけど、未だに彼女との連絡のやりとりは続いている。
もう最近は個人的なやりとりはほぼなく、先ほどの大学の同僚が集まったグループLINEでのやりとりが多いけど。

昨日のことだ。新年の挨拶を兼ねて、久しぶりに個人のLINEを送った。

明けましておめでとう。何してる?何してる?

返ってきた返事は
ヨドバシカメラで骨伝導イヤフォン見てる。

ほら、色気も何もあったもんじゃないんですよ。
僕らはきっとずーっと大学時代の同僚の関係。ジャストフレンド。

ただ彼女が骨伝導という言葉を発したとしたら、それはなんだかグッときたんだよ。

みんな今年も元気でいこう。少しずつ友達が鬼籍に入っている。Tちゃんに限らず、ずっと友達でいいんだけど、もう二度と会えないというのは、ちょっと寂しいからね。

 

 

-エッセイ
-, ,