エッセイ

北極星と南十字星は、会うことはないけど、きっと心は通じ合っている

「壁の穴がある!!」
いや、それを言うなら「壁に穴」があるだろう。
そういえばあの頃は、壁に穴があくくらいのことはいっぱいできていた。
音を立てて時代が変わっていた。
でも、それは今でもそうなんだろうな、と思う。

恐ろしいスピードで変わっていった時代

何度かこのサイトで記事にしたけど。
僕が広島から東京に出てきた頃は、
まだ、スパゲティにはナポリタンとミートソースしかなかった。

いや、もちろん、他にもメニューはあったんだろうけど、僕の周りには、というか僕はその2種類しか知らなかった。

大学浪人していた僕は、ありがたいことに父母に「東京で受験勉強をしろ」と言われて浪人から東京で過ごしていた。
予備校は代ゼミ。
一緒に受験勉強していた同僚が、「壁の穴があるから昼飯はそこにしよう」と言い出した。
「は?」
壁の穴があるではなく、壁に穴があるだろう。それにしてもそこで昼飯とはどういうことだ?
とマジで困惑した。まあ、当時、マジで、という言い方はなかったけどな。

「ばかか、田中は」と笑われながら連れて行かれたところは、「壁の穴」という名前のスパゲティ屋さんだった。
そして、衝撃を受ける。
そうそう、納豆やたらこスパゲティ。
今ではもう当たり前だけど。

今ではもう当たり前だけど、かつてはそうじゃなかったことを

スパゲティといえば、ナポリタンとミートソースが当たり前だったけど、今はそうじゃない。
僕の周囲を見渡すと、そんなものばかりだ。
ビールは夏しか売ってなかったし、酒屋で冷えたビールは「冷やし賃」がかかって少しだけ高かった。
アイスクリームだって売っていたのは夏だけだ。冬のアイスクリームBOXは鎖でぐるぐる巻きに縛られていた。
カメラは大人のもので、フィルムで撮影して、現像してた。今は子どももスマフォを持っていて簡単に撮影できる。ハード印刷はほとんどしない。
メール、といえば手紙のことだったけど、今は電子メールだ。というか既に電子メールやEメールという言葉が使われなくなった。
黒い電話はもう見ないし、革靴を履いて会社に通う人も少なくなった。

むしろ。
変わらないものは何だろう?

変わり続ける者の中で、変わらないものを探せ。

そんなお題を、どこかからか頂戴してような気がする。
でも、こんなお題、解けるわけないじゃんね。

おまけとして、壁の穴のこと。

壁の穴は、実は思いの外、創業が古い。
(公式サイトのこちらをお読みください)

1953年(昭和28年)。もう70年以上も前のことだ。
そして壁の穴という名前を公式サイトから抜粋してみよう。

この店名はシェイクスピアの有名な戯曲「真夏の夜の夢」に出てくる言葉 Hole in the Wall(壁の穴)からとったものです。
恋人同士が壁に開いた穴を通して囁きあうというシーンがありますが、
原作では二人が結ばれるまでの障害を壁にたとえています。
つまり、「壁の穴」は障害を乗り越えて心を通じ合わせるために存在したのです。

そうなのか、知らなかった。まあ、普通知らないけどな。

壁には、耳もあれば、穴もあるんだなあ。

そういえば僕が勤めていた会社の後輩が
よく「壁に耳あり、クロードチアリ」って言ってたなあ。
そんなことを思い出した。

こんなバカなことを言いながら、人は生きていく。
それは変わんないことなんだろうな。

僕らのポーラスターは、南十字星はどこにあるのだろうか。

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