あれは、私がまだ小学校3年生くらいのことだった。つまり50年くらい前の話、ということですね。
親戚の家に行き、その家で食事をすることになり、少し小ぶりな薄い青いろのお皿に盛り付けられた料理を見たときは「わ、ここのお家は、夕食でプリンを食べるんだ!」と衝撃を受けた。
そんな素晴らしいことがあるものなのか。晩御飯だぞ、そこにプリン!
「箸じゃあ食べにくいじゃろうけえ、子どもたちはスプーンで食べんちゃい」と親戚のおばちゃんから、私と、その家の従妹(同い年)には、スプーンが渡された。
「箸じゃ食べにくい?」
私は「プリンは元々スプーンじゃろう、食べるのは」と頭の中で少し疑問を抱きながらも、そんなの関係ねー、とスプーンをその皿に向かって突進させた。
初めての体験。衝撃、としてとまどい。さらに喜び
その料理を口に入れたとき、衝撃が走った。「何じゃ?こりゃーー!!」
私は広島出身で、小3の頃は当然広島弁全開だったので(今は半開)、リアルにそう口走ったかも知れない。
最初の攻撃で、脊髄反射で感じたことは
「甘くない!」
そして「これは新種のプリンなのか……?」
市内(広島市内のことを、郡部に住んでいた私は、こう呼んでいた)のプリンは甘くないのか……。
この甘くないプリンの攻撃の第2波は、今度はジンワリと幼い私の舌から脳みそへ押し寄せてきた。
「甘くはないが、美味いぞ、これは」
私の不思議な様子を見ていた叔母が、心配な顔で声をかけて来た。
「いちろーくん(私の名前)、どうしたん?」
そこからの会話はよく覚えていないが、
プリンだと思っていたこと。
ところが甘くない。
それでも美味しい。
ということを伝え、
「何ね、これは?」と最終的には、私はこの料理の名前を聞いた。
もう、賢明な読者はお分かりだろうが、その料理の正体は卵豆腐だったのだ。
卵なのか、豆腐なのか、それとも……
私は、我が家の名誉のためにも言わせていただきますが、
茶碗蒸しは、既に食していた。
しかし、卵豆腐は盲点だった。
あ、もちろんプリンは食べていた。ハウスのインスタントだったけど。



私は、この夜、親戚の従妹(同い年)と一緒に、卵豆腐を知った(従妹は既に体験済みだったらしい)。
そして、私には、忘れられない夜になった。
それにしても、
プリンではないけど、茶碗蒸しでもない。卵なのか豆腐なのか……曖昧さに満ち満ちた料理ですよね、卵豆腐って。
